e-iepを実際に使った教員の意見
(公立A小学校通級指導教室 TT先生)


はじめに

現在、勤務している町は都市への通勤圏でありながら、のどかな自然の残る町です。住民は3万人ほどで、3
保育所、3幼稚園、4小学校、2中学校が半径1キロメートル以内に位置します。どの学校にも支援学級が併設
されています。平成19(2007)年4月、1小学校の校舎内に通級指導教室(発達障害学級)が開室され、私はそ
の教室を担当しています。

◆通級指導教室について

通級指導教室は、平成5年4月に学校教育法施行規則の一部改正により始まった新しい教育の形態です。通常
の学級に在籍し各教科等の指導を通常学級で受けながら、通級指導教室において、専門的な見識を持った教諭か
ら個々のニーズにあった個別の支援や指導等を受けるものです。
通常学級に在籍する児童が、通級指導教室に通ってくるシステムをとり、指導は個別指導を中心とし、必要に
応じて小集団での指導を行います。年度途中でも相談や面談を随時受け付けます。通級による指導により改善等
が見られ、通常の学級での指導にて対応が可能となった児童については、通級による指導を終了します。
通級指導教室へは校区内外を問わず通うことができ、通級に必要な時間は、正規の授業時間として扱います。
早退・遅刻・欠席にはなりません。送迎については、保護者の責任で行います。基本的には、徒歩や自転車と
しています。

◆通級指導教室の役割

通級指導教室の役割として、次のようなことがあります。すなわち、①児童支援: 一人ひとりの児童生徒の
ニーズに対応し、自信や意欲を育てる、児童生徒の行動の裏にある気持ちやつまずきを理解して、個に応じた指
導プログラムを作成し、児童一人ひとりの状態に合わせて指導を進める、②教師支援:在籍校の学級担任及び授
業担当の教員へ情報を提供する、子ども理解のための情報資料を交換・交流し、児童への支援のあり方を相談す
る、③保護者支援:保護者の心情を理解し、アドバイスする、保護者と定期的な面談を持ち、保護者の気持ちを
理解することに努め、信頼関係が結びながら、児童の家庭における安定化に向けて支援していく、④関係機関と
の連携:在籍校との連携はもとより、必要に応じて医療機関等と連携をとる、の4つの柱を設けています

◆対象児童

対象児童は、LD、ADHD、高機能自閉症等の発達障害の児童、および、その他として、ことばの発達が遅れ
ている児童等です。現在、通級指導教室には、知的に遅れのない通常学級に在籍する20名弱の小学生が通級し、
その内訳は、コミュニケーションの課題を持つものが半数、自己コントロールの課題を持つものが半数、その他
として、構音障害やことばに課題を持つものが少数です。
自校通級児童、他校通級児童が半々程度です。自校通級児童は週1時間、授業時間に、他校通級児童は週1時

間、放課後に、それぞれ、通級指導教室での指導を受けています。
指導形態は、1対1の個別指導を受けるものが2/3、少人数グループ指導を受けているものが1/3です。

◆教師支援・保護者支援・町内支援

どの児童も集団で生活する中での行動上の課題を抱えています。そのため、教師からの支援要請は、行動上の
課題、すなわち、不適切な行動を減らすことがほとんどを占めています。また、同様に、保護者からの相談も、
不適切な行動に関しての対処の仕方について、がほとんどです。そのため、児童の指導と並行して、児童とは別
の時間に、月1回1時間から1時間半の保護者面談を実施しています。面談においては、行動のメカニズムや環
境調整・対処方法等の心理教育を実施し、我が子の不適切な行動に巻き込まれず、適切な行動へ修正し、適切に
強化する方法を学んでもらっています。担任やコーディネーターにも同様の内容を理解してもらい、実践を促し
ています。
毎年、通級への入級者は増加しているのが現状です。入級まで至りませんが、担任やコーディネーターと連携
しながら、フォローしている事例も複数件ある。また、町には専門家チームがなく、私には専門性を活かした助
言を求められることも多いです。一方で、特別支援教育の拡充・推進のための組織作りにも一翼を担っています。
小さな町ならではの「一人複数の役割」を担っているのが現状です。

5.個別の指導計画作りツールの「e-iep」について

「e-iep」とは、「個別の指導計画づくり」を助けるコンピューターソフトウエアです。ネット環境を使っての
「個別の指導計画づくり」に必要な手順が全てデジタル化されていて、項目等容易にカスタマイズすることがで
きるので、学校毎のニーズに細かく対応することが可能です。現場で使いやすいツールも装備しています。また、
e-iepは複数の教師で子どもを支援することを基本としています。そのため、情報の共有機能やコミュニケーシ
ョン支援機能を備えていることが利点です。
特別支援教育では、保護者と教師などの支援者との連携がとても重要です。家庭訪問や個人懇談、電話や連絡
帳など、さまざまな機会を捉えての直接対話が重要なのはもちろんですが、これらは、時や場所の制約を受けや
すく、なかなか機会が取れないのが現状です。その点、このシステムのメールによるコミュニケーションは大変
有効です。特に、活用度が高いのが「連絡帳機能」と「メモ」です。「連絡帳機能」は保護者の携帯電話からe-iep
に登録しています。担任、特別支援コーディネーター、通級担当者にメッセージを送る事ができ、担任が不在の
時でも、連絡が停滞せず、迅速な対応が可能になります。さらに、連絡帳機能による通信は全てe-iepサーバー
上に記録されるので、保護者の携帯電話に情報が残らず、万一の紛失時にも安心です。もちろん、他の携帯電話
からアクセスをする事は出来ません。一方、「メモ」は、支援者同士の情報の共有に役立っています。普段の出
来事から打ち合わせの記録といった文字情報はもちろん、画像の保存も可能です。一つひとつのメモにコメント
を残せるので、支援者同士の連絡や伝達にも活用が可能です。過去にあった事柄を記録することで、担任交代時
の引き継ぎ資料にもなります。ゆくゆくはネット上の「ケース会議」もできるようになるとのことで、さらなる
改善を期待をしています。

6.e-iepを使っての活用例

では、通級指導教室で実際にe-iepを使っての活用例を紹介します。通常なされている指導や支援については、

誌面の関係上最小限に触れる程度ですが、どのケースも通級担当者、担任、コーディネーター等の支援者同士
の協働があり、保護者との信頼関係の上に連携があることを確認することが出来ます。なお、事例については、
個人を特定できないように複数の事例を合わせたり、内容に支障のない項目を修正したりしてあります。何分、
小さな町ですので理解ください。

事例1
はじめの事例は、他校通級の広汎性発達障害の3年生男児です。

主訴
学校では、自分の考えを述べたり、書いたり、他者の考えを読み取る課題は困難です。抽象度が増すにしたが
って、授業中のたち歩き、および、大声で「先生」「わからん」と対応するまで言い続けるなどの不適切な行動
が増加しやすい傾向があります。学習への集中時間が短く、使用できる語彙にも偏りがあり、順を追って話せま
せん。
家庭では、間違いの指摘や不適切な行動に対して、「やめなさい」としかると、「ケチャップ」「マヨネーズ」
など、文脈と関係ない言葉を連発し、物を落とす、つばを吐く、えんぴつの削りかすを妹の机にまく、などの不
適切の行動が生起すると報告されています。

児童の様子
作文が苦手です。算数以外の教科は集中しにくく、内容によっては参加できないこともあります。漢字、計算
などパターンが決まった活動は、集中して行えます。また、いろいろな面でのこだわりをもっています。野球の
スコアつけが趣味で、野球のことについては、とてもよく知っています。野球博士です。わからないことの不安
が大きくなるとパニックになることがあり、自分が他人から「責められた」と思うときは感情を爆発させること
が見られます。コミュニケーションの課題をもち、日常的に些細なトラブルが起こり、担任や保護者も対応に苦
慮している児童です。

保護者の願い・指導目標・指導内容
保護者の願いは、「本人のよいところを十分に伸ばしながら、本人に合ったペースで学習が進められること」
であり、長期目標は、「できていること、得意なことを伸ばしながら、より適切な行動を増やしていく」としま
した。
担任と話し合って、トラブルが起こりやすい場面について環境調整を、通級指導では、「怒りのコントロール」
を中心にソーシャルスキルトレーニングを実施し、本児への行動修正を試みました。
担任を通して、①指示を与えるときには、注意を集中させてから、具体的に、短く、伝える、②予想される不
適切な行動に対しては、あらかじめルールを確認しておく(本人の理解程度を確認)、③注意を転導させたとき
に、戻りやすいように、視覚提示をしておく、④不適切な行動が出た場合、頭ごなしに叱らず、言い分を聞いて、
より適切な行動を教えてやる、⑤「やめなさい」「ダメです」の指示は、できるだけ感情的にならず行う、こと
を全教職員に徹底してもらいました。
担任は、彼の特性は理解されているが、周りとの児童とのギャップに対して、どう対応すればいいのか、試行
錯誤されていた。担任から毎日のように、「どんな出来事があり、どう指導したか」の報告があり、通級担当の
役割として、指導に対する確認と助言が期待されました。したがって、この事例では、e-iepの「メモ」機能を
大いに活用して担任と連携してきました。その一部を紹介いたします。
X年X月5日 担任から

  • ・・(前略)キックベース、まわりの動きについていけず、わからないとふざけてしまうので、周囲の男

の子の不満がたまってきた。担任とルールを勉強。しかし、頭では理解しています。様子。現実の動きでの問
題のようだ。友達とのかかわりは前進ではあるものの本人のゲーム参加のこだわりと、ついていける力の差で
悩ましいところです。今はキックが生きがいのようになっているので・・・(後略)

通級では、キックベースでのできごとについて、話題にしてみました。出来事のあった日は、みんな遊びで、
キックベースをすることになっていました。まず、Aに、コートの図を描いてもらい、位置関係や基本的なルー
ルを確認しました。野球が好きだったので、まず、野球と同じ点を確認しました。それぞれのポジションの役割、
ヒット、セーフ、アウト、3アウトで攻守が入れ替わることなど基本事項は理解していました。次に、野球と違
う点を確認しました。投手がいる野球と違って、キックベースは、地面に置いたボールをけることなど、違いに
ついても理解していました。
時系列に行動を振り返ることにしました。まず、Aに「Aさんは、どこにいたの?」とたずねました。すると、
Aはコートの図の一塁を指しながら、「1塁にいた。」と答えます。「そして、次にどうしたの?」とたずねると、
「Bが『次の人がけったら、走れ』と言ったので、走った。そしたら、Bがものすごく、怒って、すごい顔で『も
どれ』って命令するねん。『走れ』と言ったから、(言われたとおりに)走ったのに。とても、腹が立った・・・」
と、説明してくれました。次の打者と自分の行動を関連付けて考えることができなかったのです。
そこで、コートの図の上にAとBとC(次の打者)に見立てたコマを置き、それを動かしながら、説明を試
みました。まず、Cが蹴ったボールがどこに落ちたか確認。実際には線の内部に落ちたので、ファールでした。
この場合は、Cはもう1回蹴るので、Aは走らないことを確認。そして、Cは「ヒットのときだけ走れ」と言い
たかったことを説明したところ、Aは「そんなん、知らんかったもん・・・」と自分が怒ってゲームを台なしに
したことを反省しました。最後に、Aの理解を確認しながら図1を作成。Cがボールを蹴って、「ファールの場
合、Aは走らない」、「アウトの場合、Aは走らない」、「ヒットの場合は、Aは次の塁まで思いっきり走る」こと
を再確認しました。指導後、担任と保護者には、指導内容を報告しました。担任はその情報を得て、その後の指
導に活用したとのことです。

図1 打者と自分の行動の関連付け

X年X月16日 担任から
1時間目(算数)、途中からペース崩れ、「後ろのDの筆箱の中身をぶちまけ、あやまれず、指導。給食準備中、同じD
の折り紙の邪魔をはじめ、そのDの机の中のものを床にぶちまける。その後、気持ちを一緒に整理しながら、自分の
悪かったことをふりかえらせると「なんていっていいかわからない」、「もやもやしてやっちゃった」、「自分も同
じことをされたらいや」と、Dに謝ることができた。通級での学習『怒りのコントロール』のことを少し振り返る。

通級では、怒りのコントロールを目的として、「怒りのメカニズム」「自分の感情やその変化を知る」「対処法」に分けて指導しています。出来事をふりかえり、イラストを参考にしながら自分の感情を言語化し、気持ち温度
計を参考に数値化します。そして、どういった状況で、コントロールが不能になるのか理解させていき、同時に
回避の方法を教えていきます。実際場面に近いロールプレイを実際にしてもらい、練習させます。以前に報告済
みだった『怒りのコントロール』の内容を活用しながら、ふり返りを実施しました。

X年X月17日 担任から
運動会練習,隊形移動についていけず、運動場の端で休憩 ・・・(略)・・・聞こえてくる運動会の音楽に反
応し、廊下に出て運動場を見ています。声かけで教室に戻るが学習はできず。チャイムで遊びに行こうとするの
で、約束を確認。授業も遊びもルールが大切。

X年X月18日 通級から
運動会、少しずつの参加でOK。先生が書かれているように、授業も遊びもルールが大切!不適切な行動が生
起する前に、止められると、(気が変えられると)いいのですが・・・それが、3分でも後に延びればOK!がん
ばっていることをフィードバックしてやってください。

成果が崩れやすいこの時期。担任の徒労感を受け止めつつ、ねぎらい、認めるメッセージを送ります。やるべ
きことは理解されていますが、環境要因により、足踏みや後退もあります。児童の状況を判断し、その都度、調
整することも必要。担任が孤立してしまうと、周りからの無理解な言動に振り回されがちになり、児童の状態を
無視した厳しい指導に走りがち。そのときにはこういう支援もあっていいと思います。

X年Y月23日 担任から
図書室で学年合同の読み聞かせ会がありました。絵本の読み聞かせ、紙芝居、一人語り、の3本だてでした。
このシチュエーションが混乱するパターンなので気をつけてそばにいたのですが、最後の一人語りの途中からご
そごそしだし、「みんなの中につっこんでやる」と攻撃的になり、気をそらしても効果なし。結局、抱きかかえ
て退出。今回抱えて抑えた私に、殴る蹴るが出たことです。やむをえない対応でしたが今後も十分出てくる場面
でしょうね。周囲に釘を刺していたのでまわりは無反応で、落ち着く速度も速かったです。落ち着いたころ「何
でいらいらしたの?」ときくと「わからん」とのことでしたが、語りの内容がわからなかったのではないかと思
います。回りのみんなが反応してとても受けていたので「みんなにつっこんでやる」となったのでは?と思います。

X年Y月24日 通級から
先生の把握する力に脱帽!すごい!きっと、そうだと思います。その後の対応はOKです。彼の特性と反応は
予測できるようになれば、次は・・・あらかじめ、紙芝居のあとで退出、または、他の活動を入れることを考え
るといいと思います。抑制まで出ない手前で、こちらが切り替えることができると花丸!
抑制や移動は高学年では難しいです。あらかじめ、「こういう場面ではこうするよ」と確認しておけば、少し、
ましかもしれませんが・・・なるべく、最後の抑制には行かない段取りを必要としていくということです。

担任の気づきを認めつつ、担任の行動を、児童にとって好ましい適切な行動へとシェーピングしていくことを
ねらっています。そうすることで、「押しつけられた」、「時間的に無理」といった支援者側の無用な反発を回
避し、自発的により適切な行動を選択し、行使してくれるようになります。

なお、最終的には、保護者における本児への特性理解も深まり、医療につながったケースです。

X年Y月22日 保護者から
授業参観での英語のスピーチは自宅ではスラスラと言っていたのに、緊張してできなかったと言っていました。
最後まで頑張ったところは良かったよ。と話しましたが、スッキリとはしていなかったようです。(略)最近、
特に大声で人の話しをさえぎることが多いので、落ち着いています。時に、一つ一つできることを増やしていこ
う。と言われたよね?と話して、できた時にはすかさずほめるようにしているのですが、なかなかです。少しず
つとはわかっているのですが・・・

・事例2
他校通級のADHDの4年生男児です。

・主訴
ちょっかいを出し、相手がいやがっています。ことがわからず、しつこく続け、トラブルに発展します。ルー
ルを勝手に変更します。暴言だけでなく、手足が出やすい。

・児童の様子
文字が乱雑で、枠内に収まりません。細かい作業は苦手で雑になります。身辺整理は苦手。机の中や周りは雑
然としています。友達との関わりを求め、友達と遊ぶことは好きですが、コントロールの課題をもち、衝動性が
強く、「いいすぎ」「やりすぎ」による友だちとのトラブルが頻発し、激高すると落ち着くまで時間のかかる児童
です。また、書字にも抵抗をもっています。
本人からは、自分の感情を表現する言葉がほとんど発せられず、「べつに・・・」「もういいやん」「どうせ」
という言葉が口癖で、不満を抱え、自己への肯定感も低いように思われました。

・保護者の願い・指導目標・指導内容
保護者の願いは、「友達との関係が、うまくできるようになってほしい」、であり、長期目標として、環境調整
を試みながら、「できています。ところ、がんばっているところを認め、適切な行動を増やし、不適切な行動の
割合を低減する」を設定しました。

母親へは、本児の対応に苦慮されていたため、本児の特性理解の促進に努め、その都度、対応方法を助言。
家でも、保護者からの叱責を受けやすかった本児の環境を調整し、ほめられる、認められる経験を増やすこ
とを目的として、①トラブルがあったとき、叱るのではなく、視覚化して本人にわかるように整理しながら、
言い分を聞いてやってほしい、②指示の仕方を工夫する:ルールを明確化し、短く、具体的に指示する、予
告も含め、声かけをしながら促し、自発行動を作っていく、③できないことに目を向けるのではなく、でき
ていることを認めてやってほしい、④お手伝いなど継続してできることを設定し、できたら認めてやってほ
しい、とお願いしました(落ち着いた後、④を追加)。
担任へは、本児の特性を説明し、理解促進に努めました。具体的には、①知っている力を使って、試行錯
誤したり、推察したりするすばらしい力をもっている、それを活かしながら、できていること、がんばった
ことは、その都度こまめにほめて(認めて)やってほしい、②情報入力の際、見落としや、一部を見て、ま
たは、最後まで聞かずに早合点があり、文脈が理解できなかったり、他人の意図を誤って捕らえたりしやす
い、特に、耳からの情報は、忘れやすく、誤りやすいので、視覚支援を対提示すること、③トラブルのとき、
話だけで進めず、紙に関係を図示し、言葉や行動を書きながら全体の構図を理解させること、④指示は、短
く具体的に、黒板に1○○、2△△・・・と書いたり、メモを渡したりすることが必要、⑤雰囲気や表情を
読み取りにくいので、イエローカード・表情カード(怒っています。カード)・合図などをうまく利用して、
予告および周りの状況の理解を促してやってほしい、⑥頭ごなしに叱らず、本児の言い分を聞いてやってほ
しい、注意するときは、個別的に、理解促進に努めながら指導してほしい、⑦激高しているときには、刺激
の少ない場所でクールダウンさせ、落ち着いたときに、指導することを全教職員に徹底してもらいました。

通級教室では、「怒りのコントロール」を中心にソーシャルスキルトレーニングと漢字を関連づけて指導
することを実施。出来事を振り返る中で、自分の感情の動きと、他者の感情に気がつくように促す(気持ち
温度計での気持ちを数値化、気持ちカードを使って、感情を言語化する)、不適切な行動のかわりに、適切
な代替行動を提示し、ロールプレイする、「ルールを守ること」を目的として、毎回、事前にルール確認の
上、ゲームを実施しました。負けてくると、激高し、ルールを勝手に変更する、ズルをする、暴言を吐く等
の不適切な行動が増加し、ゲームそのものの継続が難しくなりました。そのため、当初は、本児の様子を見
ながら、こちらが加減できるものから始め、ルールを守って最後まで継続することを優先しました。その後、
徐々に負けそうになるようなストレス場面を加えていきました。
現在、男児には、[考え-感情-行動]は関連していることを説明し、なるべく良い循環になるようにも
っていく方法をいろいろ出し合い、自己の特性理解促進に努めながら、対処方法のレパートリーを増やすよ
うに働きかけています。本児は「がんばれています。(爆発手前で治まっています。)」と自己理解していま
す。漢字もがんばってきています。また、ゲームでも、負けてきても、激高することなく、不適切な行動も
生起しなりません。ゲームそのものを楽しめるようになってきました。
この事例では、e-iepの「連絡帳」機能を活用して、保護者と担任と通級担当者の三者が連携した事例です。その一部を紹介します。

X年Y月26日 担任から
1時間目に、みんな遊びとしてSケンをしました。押し合いへし合いして、相手チームの宝物を取り合うゲー
ムです。Eは力加減がわかってきて、だんだん楽しめるようになってきました。今日は押しても押されても、泥
んこになってもアウトになっても、文句も言わず、そして言われずに笑顔で遊ぶことができました♪

X年Y月26日 保護者から
今日は帰宅した時、機嫌がいいな〜と思ってました。夕方友達と遊んだ日はいつも機嫌が良いので、『今日遊
びに行ってた?』と、聞いたら、『ずっと家にいた』との事だったので、機嫌が良いと思ったのは、気のせいだ
ったのかな??と、思ってました。先生からのメールで納得しました。母の直感はまだまだ いける!!と、自
分を褒めました(^^)。

X年Y月27日 通級から
いい話ありがとうございます。彼にとって、加減が一番の課題ですが、うまくいった経験を積むことが一番効
果ありです!!

X年Y月4日 担任から
3学期に入って宿題忘れが激減です。がんばっています。漢字テストに変化が出てきました。ここ数回のテス
トの文字が、整っていて大きな濃い字で書けています。読みやすく、正しく書こうとしているのがよくわかりま
す。結果も出ています。テスト中にコソッと「Eのこの字、きれいなぁ」といって頭をなでるとさらに集中して
書いていました。
体育でバスケをしています。攻防が入れ変わり、体も触れる試合。今日はディフェンスをしていて何度か友だ
ちとぶつかっていましたが、お互いムキにケンカすることなく「いたぁ」言ってケロッと参加していました。大
好きな友だちとの関係も、一声かけると、距離を加減しながら付き合っています。

家からのメールでも漢字の上達が報告されています。

X年Y月5日 通級から
「テスト中にコソッと」はナイスですね。さすが~ほめ方とっても、じょうずですねえ。彼が一番うれしいや
り方ですね。

X年Y月18日 担任から
4時間目のSケン。Fととっくみ合いをしてしまう。原因は、アウトじゃない方法をとったつもりが、友だち
にアウトと指摘され、担任に確認に来るが、担任にも否定され、担任は、けが人の対応をする。その後、「前、
良かったやん!」とイライラがつのり・・・(略)、 怒りを植木にぶつけていたEに、Fが注意。さっきまでの
イライラと重なり、怒りが爆発。EはFを蹴り、取っ組み合いのケンカに発展。すぐ間に友だちが入り、気づい
た私も間に入り二人を引き離しました。
興奮状態のEは、傘立てを倒し続け、掃除箱を蹴り・・・(略)外に自分で出て、クールダウンし、30分ほど
経つと顔の表情も落ち着き、自分で教室へ戻りました。Eとのふり返り結果①Sケンのルールが前と変わってい
て「イライラ」、②Fが自分に対して悪口を言っていたようだったので「クソーッ!」、③気持ちが爆発して、先
に足でFを蹴ったとのことでした。気持ちを切り替えて場所移動できたこと、教室に戻り、Fさんとの距離を取
れたことがよかったとフィードバック。(後略)

X年Y月18日 通級から
連絡ありがとうございます。助かります。指導に活かします。いつもながら、うまく振り返りをされ、まとめ
られているなあと、感心します。じっくり聞いてもらうことで彼も振り返りやすくなります。時間がかかります
が、この「じっくり」をあせると、結局もっと時間がかかることになりかねませんので、がんばっ て!この件
をうけ、通級では、いくつかのターニングポイントでの行動について、と暴力を振り返りたいと思います。だん
だん力が強くなるので、「人は絶対蹴らない」ために「人を蹴る」ことの代替行動を考えさせていきたいと思い
ます。

X年Y月18日 保護者から
Eの様子ですが、Fさんとは、解決していて、すっかり忘れていたのが本音のようです。先生からお電話を頂
いた後、今回の事が起きてしまった理由を聞いていた時、私が、蹴った事を注意したら、E曰く、Fが先に蹴っ
てきたとの主張でした。クールダウンしていた時に蹴られた事が本当に悔しかったようで、涙ぐんで、私に訴え
てきました。先生からは、Eが先に蹴ったと、聞いていたのですが、先に蹴ったのがどっちかを私が追求しても、
どちらが正しいかは分からないので、『もし、Fさんが先に蹴ってきたんなら、悔しかったね』と、Eの気持ちを
受け止めて、何とか落ち着きました。落ち着いた後、理由は何にしろ、蹴ったのはだめだね。と、振り返りを簡
単にし、Fさんと仲直り出来たのなら、良いよ。と、話を終わらせました。その後、自分の部屋で、明日の参観

の発表の練習を機嫌よくしたので、昨日の事は既に過去の事になってるようです。解決した事をぶり返す事は止
めておきます。先生のご対応で、完全にスッキリしているようです。ありがとうございました。

X年Y月18日 保護者から
やはり、先に蹴ったのはEでした。ただ、Eが蹴ったのGさんで、次にFさんがEをけったようです。FとE
の間では、Fさんが先に蹴ったので、私にずっと、Fさんが先に蹴ったと、言ってたようです。やっと、つじつ
まが合いました。
『いきなり蹴られたらどうしたらいいねん!!』と、Eが目付きを変えて、訴えてきた時、『逃げなさい!』
と答えたら、更にEが怒り出してしまい、この私の対応はちょっと失敗しました。先ほどのメールに書いた通り、
『蹴られて辛かったね』と、辛かった気持ちを受け止めたら、無事、Eの気持ちは収まったのですが。『蹴られ
たらどうしたらいいねん?』の質問にはどう答えたら良かったでしょうか?

X年Y月19日 通級から
お母さん、なかなかですね!うまく対応されたと思いますよ。蹴りの件は、お母さんが後につかまれた情報か
らすると、直近の相手ではない子から蹴られたことが納得いかず、不本意でもあったと思います。こういうとき
の対応は、「いきなり蹴られたら」という言葉だけに注目してその言葉だけに対応することをしないことです。
必ず、文脈があり、気持ちが裏にあるのでそのあたりの全体像を把握してから助言します。まだつかめていない
ときに私ががよく使う手は「Aなら、どうすればよかったと思う?」とか、「他にどんな手があったと思う?」
とかです。その答えを「なるほど・・・」と聞きながら、彼の気持ちのあり方や状況を探ります。ただ、その場
にいないものとしては、なかなか難しいので、お母さんは彼の気持ちに添うことが一番だと思います。いろいろ
試行錯誤でがんばってみてください。お疲れ様でした。そして、報告ありがとうござい ました。次の指導につ
なげます。

X年Y月18日 保護者から
(前略)そうなんです、Eがずっと納得できなかったキーワードは『不本意』だったと思います。Eには、「先
生は、Gさんを最初に蹴った事知らなかったみたい。」と、伝えると、「そうやったん」と、落ち着いた口調で返
事がありました。先生の助言のおかげで、Eが落ち着いたままで、話をする事ができました。(後略)

事例3
他校通級してくる広汎性発達障害の5年生男児です。

主訴
授業中、絶えず私語をし、友だちの発言を聞こうとせず、ふざけます。注意されても、なかなかやめません。
当ててもらえないと、「差別や」と言って授業妨害をします。

児童の様子
授業中における私語、暴言等の不適切な行動が頻発し、担任の困り感が高かった。一方、本児はやるべき課題
は完全に最後までやり、字は丁寧で、几帳面です。細密画のような絵を描き、戦艦などに興味と関心をもち、物
知りでした。本児に困り感はなく、当初、通級での学習意欲は低かった。
保護者の願い・指導目標・指導内容
保護者の願いは、「相手の気持ちのわかる子になってほしい」であり、長期目標は、「できていること、得意な
ことを伸ばしながら、不適切な行動を低減する」とし、短期目標を「周りの視点や自分の考えの偏りに気づく」
「不適切行動の代わりに、より適切な代替行動を身につける」とし、指導を開始しました。当初、時間にこだわ
るので、開始・終了時間は厳守して、約束は守られることを経験させる、活動のスケジュールを最初に提示し、
見通しを持たせる(本児と確認)、時間を守って来室できたこと、がんばっていることを具体的にほめる、また、
基本的なスキルのポイントを教えることで、周りの視点(暗黙のルール)や本児の考え方のくせ(認知の偏り)
に気づかせることを試みました。
担任には、耳からの指示は、忘れやすく、誤りやすいので、視覚支援を対提示する、できていることを認めて
やってほしい、簡潔で、具体的な指示を依頼し、得意な分野で活躍の場を設定するようにお願いしました。また、
場の雰囲気や表情を読み取りにくいので、頭ごなしに叱る前に、段階的に予告し、周りの状況の理解を促すこと、
注意するときは、個別に、理解促進に努めながら指導するようにお願いしました。
当初、担任も保護者も、本児の特性理解は難しかったようです。どうしても、本児が些細なことにこだわるの
かがわからず、「言いがかりをつけて、わざと困らせています。」としか思えなかったようです。そのため、いつ
でも、助言を受けられることを伝え、実際、その都度、具体的に助言していきました。

担任から
「連絡帳に授業の学習を写すことの抵抗」が訴えられた。この学級では、ノート忘れの際、自由帳か連絡帳に
書くことになっている。自由帳に書き始めたが、途中でページがなくなり、白い紙を取りに来た。「続きは連絡
帳に書いてね」と指示したら泣き出した、とのことであった。

通級から
「白い紙をください」ともらいにこれたのは、えらい。次回からはほめてやって渡してやってください。1つ
のノートに1用途なので、連絡帳は抵抗感がある(自由帳は文字通り自由)。先生は間口を広く、臨機応変に受
け入れてやってください、と助言。

母親から
宿題などわからないことがあると、即答を求め、「早く教えろや」と怒鳴る。プリントは空欄で、とばせるが、
順番にノートに記していく練習問題はとばせない。

通級から
学校の宿題については、「わからないときは、そのまま、提出でよい」と担任から指導してもらった。1つの
問題に、できている問題を見て、3行ずつなどと目安をもたせて、何行とばしたら、いいか理解させることを助
言。実際は、わからない問題の番号を後回しにすることを受け入れた。

担任から
加減がわからない:座席は1番前だが、「見えない」というので、「前に来ていいよ」と指示すると、黒板すれ
すれまでやってきて、他児とトラブルになった。

通級から
「『前に来ていいよ』と指示されたから、やったまでのことなのに、なぜしかられるのかわからない」という気
持ちがある(実際、後日、本児に確認)。あらかじめ限定を設けて指示することを助言。また、先生の思いと彼
の願いにズレがあるので、本児に「どうしたいか」と確かめることを助言。

保護者や担任の理解が深まるにつれ、適切な指示や対応が増加したと考えられます。例えば、担任がルールを
示し、具体的に「○の後、聞きます。」と対応することで、本児は、待てるようになってきています。その結果、
本人も「最近、叱られない(ほめられる)」ことを自覚できてきているので、自信につながっています。家での
お手伝いです。風呂洗いを「役に立つ」と誉められ、継続してがんばれています。大きなトラブルは激減。本児
は、大変落ち着いていて、几帳面さや学習の継続など、得意な分野での伸びが顕著であり、まわりの認めも増加
してきました。
クラス替えで、新担任の指示が明確で簡潔なので、本人にとって、居心地よく感じられています。担任のいい
ところは、「授業変更があまりない」、「ちゃんと対応してくれる(本人が理解できる説明と納得いく対応)」、「自
分でがんばることを自慢できる(トークンエコノミー)」と語り、本人の特性に合った対応のおかげで、得意な
ところだけでなく、苦手なところへのがんばりも見られます。限定されていた友達とのかかわりが拡大増加。友
達からの彼への認めも増加傾向にあります。
一方、自分の興味のあることや「今言いたいこと」については、相手にお構いなしに話し続けたり、相手の気
分を害していても、気づかなかったりすることもよくあります。そこで、通級では、「相手が応答可能かどうか
確認する」など、一歩進んで、相手の状況を確認したり、相手に合わせたりするソーシャルスキルトレーニング
を中心に実施。その指導と並行して、認知の再体制化も行っていきました。例えば、「並んでいると、後ろの女
子が何度も殴ってきた。はじめは、たまたまかと思った。許せるのは2発まで」というできごとがあった。「わ
ざとやっている(認知)」と考え、その根拠を尋ねると「振り向いたら、ニヤニヤしていたし、3~10発となっ
たから」とのことでした。その後のことを尋ねると、「女子やし、周りも女子ばかりやったから、あきらめた。
走って教室に戻った。別の時間に担任に報告したところ、ちゃんと謝ってもらった。許した。」とのことでした。
まず、うまく、対処したことをほめました。その後、いくつかの点について一緒に考えていきました。①言葉の
再定義:「殴る」と「当たる」の動作を実際にやって比較してみて、この場合、「殴ってきた」ではなく、「当た
ってきた」が正しい、同様に、「発」についても、「回」に改めさせ、「並んでいると、後ろの女子が3~10回当
たってきた」と言い直してもらいました。また、相手の顔の様子など詳細を再確認し、「ぼーとしていた」表情
で、怒りなど感じなかったことを確認。最初のことばと比べ、「相手の悪意が100%感じられる」から悪意の度
合いが低減し、結局、「おちょくり度30%、悪意 40%、その他30%」と本児は考え、相手への怒りは減少して
いきました。
さらに、出来事(ストレッサー)をどう考えるかでその後の反応(ストレス)が変わることも指導しました。
例えば、出来事:後ろの人がパーで背中をいきなり、たたく(実際にロールプレイして確認)
A 「俺の邪魔をしたいのか!」 → 腹が立つ・・・ストレス反応
B 「なんか、私に用があるのかな」→ 腹が立たない
その他、自分の気持ちのコントロール、怒りのメカニズム、セルフモニタリング、いやな気持ちが強くなる前
の予防(リラクセーション、呼吸、軽い運動、イメージの活用、気楽にできること)やイジメやストレス場面で
の対処のシュミレーション、などを実施しました。
本児は、他者の視点がとれるようになってきて(「自分は○したいが、これ以上したら,まわりが困るだろう」)、
かたくなさが取れてきて、周りの意見に耳を貸すことができるようになってきました。後半は、相手の受け入れ

も可能となってきました。

小学校を卒業し、中学校へ進学していった元通級生へは、移行支援も含め、校内研修やケース会議への参加の
機会を利用してフォローを行っています。さらに、並行して、e-iepのシステムの中に通級担当も入って必要な
助言を行っています。中学校では、各教科での様子をアセスメントし、チェックリストにチェックをし、対象の
生徒の特性を理解し、指導目標と手だてを考え、記入することになっています。中学校は、小学校と違って、関
わる教師の数が段違いに多い。特性を共通理解し、手だてや配慮を含め、e-iepは情報を共有化するツールとし
て、今後の活用が期待されます。

まとめ

e-iepの連携システムは、広域の範囲を受け持ちながら、いろいろな人と連携していく必要のある通級指導教
室やセンター機能を有する機関にとって、有効なシステムです。特に、扱う情報が、配慮の要する性質上、連携
してやり取りが必要な事柄は、セキュリティーを確保しながら、時間の制約なしに、必要なときに、必要な助言
や支援を与えたり受けられることはありがたいです。
また、ネット環境の整った場所なら、いつでも連携が行え、さらに、文に、図、写真、映像などの視覚情報を
添付することで、実態把握がより正確になり、すべてをデジタル化することで、新しい情報を更新したり、情報
を得られやすいことも利点です。
一方、教師への支援として、現場では、実際に即した実践的な研修が望まれています。にもかかわらず、その
多くは一般的な内容にとどまっています。研修会などの間接的支援だけでなく、児童生徒と教師の関係性などの
環境要因にも踏み込んだ直接的支援が必要です。その点でも、e-iepを使った支援は、担任への1対1の支援に
とどまらず、その支援が、その児童に関係していきます。他の教師の研修の場にもなるという予想もしなかった
累加の可能性が期待されています。
今回、e-iepのモニターを引き受けることで、巡回での支援の回数が減り、間隔が延びた分をカバーすること
ができ、さらに、担任への1対1の支援にとどまらず、その児童に関係している他の教師の力量を向上させるこ
とになりました。今後、このe-iepシステムを活用しての支援教育の拡大拡充を切に期待しています。

e-iepを実際に使った教員の意見
(公立商業高等学校 YY先生)


特別支援教育の流れから2009年4月から特別支援教育を組織的に校務分掌として位置づけ、生徒支援部として発足した。主な業務は人権教育と授業料減免事務、各種奨学金の手続きに加えて、ニーズを持つ生徒の支援である。

4月から6月まで、ほぼ1学期間は事務手続きに追われ、昨年度からの課題である情報共有について、取り組むことができなかった。1学期の終わりには、1年生を中心に情報共有システム(e-iep)を導入することを提案した。1年生を中心とした理由は、2年3年に比べて、生徒情報が少なく、夏休み明けからの動向が気になるからである。
システム導入の提案時にはさまざまな意見が出された。

  • 職場用のパブリックPCは3台で、あとは個人持ち込みのプレイベートPCである。パブリックPCは、稼働率が高く、いつも満席状態である。教師に1人1台のPCの環境ではないので難しいのではないか。

・何かイベントが発生したら、指導部と担任・学年に伝達するので、わざわざPCで報告する手間が煩わしい。
・face to face で教師間のコミュニケーションが大事である。
・生徒のことをPC上に残すことには抵抗を感じる。
・操作が複雑である。

大きく分けてこの5点に絞られる。こうした理由に対しては、生徒支援部として次のように反論した。

3台のパブリックPCが稼働率が高く、空きがないということは、それだけPCを触るチャンスが
あることであり、教材作成や文書作成の終了と同時に、情報共有システムを利用することは可能で
ある。

教師に1人1台のPCの環境であれば、いつでも触れるので便利であり、望ましい環境であ
るが、3台だからといってしない・できない理由にはならないのではないか。どの生徒の保護者も
わが子の情報を教師が同じレベルで情報を共有してもらっていると思っており、組織的な教育対応
を期待している。操作が複雑ということはなく、このシステムのインターフェイスは十分考えられ
て開発されており、これが扱いにくいということは、PC操作に不慣れが考えられるので、情報デバ
イドの問題もあるので、PC操作の研修で対応は可能である。


イベントが発生すれば、対面でということであるが、これは情報共有というキーワードをどうと
らえるかで異なる。担当者と担任、指導部と担任といったシングル双方向ではなくて、学年やクラ
スが違ってもイベントの事実は共有されなければならず、先にも述べたように、保護者からみれば
教師はすべて子どもの支援者である。学年が違うから、クラスが違うからでは、マルチ双方向で情
報共有はできない。組織的な対応が可能にするためには、マルチ双方向での情報共有であり、現在、
求められている情報共有のあり方である。


対面での情報交換は重要であるが、1対1の関係でしかなく、そうした情報交換の事実が残らな
い。職場の多忙化で言った、言わないということよく見受けられることであり、記録を残すことが
重要なことである。これまでは、生徒情報の引き継ぎでは大きなイベントの報告はあっても、その
前後や細かな情報は、大きなイベントに隠れていることが多く、実はそこに根本的な問題解決の糸
口が見つかることもある。

最後に生徒のことをPC上に残すことに抵抗を感じることが少なからずあるということだが、PC
上で生徒の情報を扱うことは現在では当たり前になっている。それをネットワークで情報共有にす
るかどうかである。この生徒についてはこんな風に見ているが、他の教師の反応はどうかといった
検証の必要であり、生徒についてはより多くの教師の主観的な判断から客観性をもった生徒像に変
わっていくのである。一人の教師の主観的な判断よりも複数の教師の主観的な判断が客観的な判断
となり、それに基づいて教育的対応をすることが組織的な対応といえるのである。

3-1 情報共有システムの導入

1年生に2学期だけ限定でシステムの導入の試行を行った。内容は、ST前に行う朝の読書で特別
支援教育コーディネーターが毎日クラスに10分間だけ入り、朝の読書の定着と生徒の様子、クラ
スの雰囲気などを書き込み、担任からコメントをもらうというものである。服装の乱れが目立つ子
がいることや寝ている生徒がいたこと、泣いている生徒がいたこと等であり、ニーズのありそうな
生徒についての質問や読書の時間にふさわしく、静寂な時間が流れたといったことなど、10分間で
感じ取ることを、ありのまま伝えることを中心に行った。
対象クラスの学年や担任からは、普段気づかない点を指摘してもらって、新しい発見があったと
か、他の学年からや他のクラスからは、自クラス以外の様子がわかってよかったとか一定の評価を
得られた。

e-iepは特別支援教育に特化した校務支援システムであり、設問ごとに答えることで、個別の指
導計画が作成できるシステムであるが、高校では特別支援教育は始まったばかりで、フェイスシー
トや個別の指導計画といってハードルを上げすぎると、難解なイメージをもち、定着しないと予想
されることから、アセスメントの基本である生徒観察を中心に広げる必要がある。

生徒観察を中心に据えることから、教師の観察の眼が養われ、複数の教師の視点からより客観性
の高い生徒像がうかびあがる。生徒観察はそのための手段であり、e-iepはそのためのツールであ

る。生徒個人のメモ機能と校内掲示板を中心に使用し、システム機能の10%も生かせていないが、
今後の活躍の期待は高い。

平成21年以降にも情報共有システムを導入することについて、賛成反対の意見集約のためのア
ンケートを実施した。結果は次のとおりである。2009.12.22

 平成19年から学校教育法改正により、全ての学校において教育的ニーズのある生徒に対応する
ことが学習指導要領に明記され、高等学校でも整備することが求められています。
対応という点に関しては、個別の指導計画の作成や個別の支援計画の策定であり、これらの計画
書では、実態把握に基づいて支援内容を立案し、支援、検証、評価といったPDCAサイクルに則
って行われます。これらには関係する教師の共通理解を得るための会議を持ちながら、計画や支援
を行うことになります。

情報共有システムはこうした一連の作業をネットワーク上で行うものです。必要に応じてFace 
To Face で顔を突き合わせての会議もありますが、簡素化できるものはネット会議で承認し、個
別の指導計画を作成しようとするものです。多くの教師からの情報発信と情報共有でアセスメント
いわゆる実態把握を行い、個別の指導計画をウィザードの形式で、指導計画を初めてでも作成でき
るように工夫されています。本来、個別の指導計画は、担任が作成し、特別支援教育推進委員会で
検討し、組織的に対応する流れです。
情報共有システムを利用するしないにかかわらず、教育情報の共有や発信のあり方、さらに個別
の指導計画を作成する方法は、組織的に考える必要があります。

いくつかの会議でだされた主な6つのQ&Aをご紹介します。

Q1 経費等はどうか
A1 システム導入について、経費等が判断材料になるのは管理職の職責にかかわることですが
参考までに。通常こうしたグループウェアの導入にあたっては、ソフト本体が100万から200
万が相場です。加えてサーバーエラーやデータ保守にかかわるメンテナンスがコストとして
計上されます。
情報共有システムは、平成19年より文科省からの研究開発の委託をうけて出来上がった
ものです。著作権は開発業者にありますが、文科省とは、情報共有システムのソフト本体を
有償でユーザーに提供しない契約で、研究開発にかかわっており、本校に導入しているシス
テム本体は無償提供です。データ保守等に関するメンテナンス料として年間5万が必要経費
としての計上が必要になります。

Q2 PCの台数が少ない環境では難しいのではないか
A2 パブリックPCが3台しかありませんが、その稼働率は非常に高いのが現状です。言い換
えれば、情報共有システムに3名がアクセスできる環境でもあります。3名の教師が1日中
占有しているのではなく、入れ替わり立ち代りで使用しているので、多くの教師がパブリッ
クPCに触れる可能性は極めて高いとも言えます。
教材作りや校務が終了した後に、アクセスすることも可能です。これまでのアクセスログ
(接続記録)では、大半が1分前後です。更新情報を読む所要時間は長くても5分から10分
で、書き込みをしても20分から30分程度です。
閲覧であれば、多くの時間を必要とすることはなく、ついでに覗き見るという程度で情報
の共有が可能になります。
パブリックPCが少数だからというのは、決して恵まれた環境とはいえませんが、業務用で
専用のパブリックPCをお持ち先生で、閲覧や書き込みをされる方とそうでない方もいるよう
に、出来ない理由とならず、しないと言う理由になります。
ユビキタス(情報機器をいつでも触れる状態)ではありませんが、意識的に触ることは可
能です。PCが1人1台ということは、ユーザーの都合でアクセスできる環境に変わるという
ことで、情報共有に対してタイムラグが、少なくなるということです。
このシステムは多くの教師の共通理解をすすめるもので、生徒の情報を共有するというも
のです。したがって一部の教師だけでは、記録という点では意味もありますが、共有すると
いう点においては、十分活用できているとはいえない側面をもっています。

Q3 個人情報を特定して書き込むことに対して抵抗がある
A3 ここで個人情報と教育情報との切り分けをしておく必要があります。
ここでいう教育情報は、学校生活上で必要な情報であり、本人の既往症や特性、これまで
の経験や様子であり、あるいは指導を受けた事実ということです。こうした情報を有効活用
するためには、情報共有をする必要があります。
個人情報や機微情報とは、家族構成や経済状況、心情や宗教等は、教育上配慮を要する場
合でも、共有数は必要最低限として扱い、教育情報と機微情報とは共有レベルが違って当然
です。
情報共有システムでは、教育情報のみとして、多くは生徒の気になる言動がほとんどで、
服装の乱れや遅刻が目立つといった生徒本人にかかわる情報ということです。  
サーバーに教育情報でも記録することに抵抗があるということもあろうかと思いますが、
そこはセンスの問題だと思います。教育情報をPCで入力してプリントすることとサーバーに
書き込むことは同じで、ペーパー保存かサーバー保存かによって違ってきます。サーバー保
存の安全性については、文科省への中間発表の際のセキュリティチェックをクリアしている
ので、安全性は非常に高い報告を受けています。

Q4 気になる生徒がいれば、直接担任や学年、指導部に報告すればことが済むのであり、わざ
わざ情報共有システムに書き込むより、手っ取り早いしコミュニケーションが大事だと思う
が、どうか
A4 情報共有は、シングル双方向ではなく、マルチ双方向で教育情報を共有することが大事で
あり、この場合、担当者と担任、担当者と学年ということで学年、部署を超えた組織的な対
応になりづらい側面を持っています。教育の傍観者をなくす意味でも広範囲の複数で情報共
有をする必要があります。

Q5 個人情報と教育情報のガイドラインはどうするのか
A5 個人情報と教育情報のガイドラインは、生徒の学校生活上必要な情報であるかどうかで、
個人の内心や家族に関することは、共有する必要がなく、そうしたことが原因で、学校生活
上に支障をきたすと判断した場合には、共有する必要が出てくると思います。
個人情報であっても過激であったり、事実から逸脱し、感情記録になっている場合は、管
理職が削除を命じるか、強制削除を行う必要があり、その為にも管理職権限でアクセスや情
報のコントロールを管理職がしっかり行うものだと思います。

Q6 情報共有をするレベルの切り替えはできるのかどうか
A6 情報共有は関係する教師に、情報が提供され、組織的な対応を可能に使用するために開発
されたものです。しかし、必要に応じてそうした場面も出てくると予想され、通常は関係教師
すべてにオープンですが、閲覧指定にチェックを入れると、チェックの入った教師だけに閲覧
可能にすることができます。

以上